昨日はピアノの調律をして頂いた。
実は今年1月にピアノを買い替えた。ドビュッシー好きが高じて、とうとうピアノもドビュッシーがこよなく愛したベヒシュタインを手に入れた。小型の家庭用ピアノM型で、1977年製のもの。
我が家のレッスン室にやってきてから1か月ほどは、音にばらつきが出たり、毎日違う音色に苦しんだ。きちんと調律して出荷されても、新しい環境に馴染むまで、ピアノも混乱するのだ。温度・湿度に非常に敏感なピアノは、本当に「生き物」だと実感する。
このピアノを楽器店で試弾したとき、なんとも懐かしい気持ちになった。
若い頃、某音大の元学部長に師事していたが、先生のお宅のレッスン室にはスタインウェイとベヒシュタインが並んでいた。私はいつもドビュッシーを弾く時、先生におねだりしてベヒシュタインを弾かせてもらっていた。
私が師事していた頃、先生は既に80歳を超えていらした。レッスンは厳しかったけれど、本当に優しいお人柄だったことを、このベヒシュタインの音色と重ねて思い出した。
スタインウェイも好きだが、ベヒシュタインの柔らかい音色が大好き。
ドビュッシーは「すべてのピアノ曲はベヒシュタインのためにつくられる」と言葉を残している。
確かに音のブレンド感が良い。混ざるけれど濁らない。まるで印象派の絵画のよう。そして、タッチによる音色の変化も存分に味わえる。
バッハやモーツァルトを弾いても、音の立ち上がりが良く弾きやすい。
調律前、1か所どうしても質が違う音があったが、そこも整音によってマイルドな音色になってくれた。
調律師さんは、「まだまだ本当に部屋に馴染むには時間がかかる。」と言っていたが、おそらくこのピアノは私の残りの人生とずっと付き合うことになるだろう。
そして生徒さんたちも、このピアノから素敵な音色を紡ぎだせるよう、一緒に音楽を創っていきたい。
大切に、第2のパートナーとのピアノライフを楽しみたい、と思う。