お盆を過ぎ、夏休みもあと2週間足らずとなりましたね。教室では夏休みに、導入課程を修了した生徒さんたちに、初見演奏の練習課題をお渡しいています。夏休みや春休みを利用して、初見のコツを集中的に練習してもらい、その後は日常の練習に取り入れていきます。「一日1曲だけでいいよ~!」と、いとも簡単に弾けるような誘導をしている私ですが・・・果たして生徒さんたち、苦闘しているのではないかしら?
「初見」とは、初めて見た楽譜を練習なしにすぐさま弾くことです。えっ?なんだか大変そう?って・・・
そうですね。でも慣れてくるとピアノの大譜表(右手・左手パートが2段で一緒に書かれている楽譜)も、いっぺんに読んでひけちゃうんですよーー!すごいでしょ!!
では、なぜ初見力が必要なんでしょう?
演奏家だって、指導者だって、楽譜を読むのに時間がかかっていたら「仕事」になりません。特に演奏家は沢山のレパートリーを持っていなければなりません。現代曲や新曲にも即座に対応、また他の楽器とのアンサンブルや、伴奏を依頼された時には、特に初見力が求められます。
初見力をつけるには、易しい楽譜をたくさん「読む」ことです。ピアノを弾かないで、音楽を頭の中で鳴らせるようになれば、たいしたもの!そして、音楽の構成を目で理解し、即座に鍵盤に移せるテクニックが必要。目→頭→手→耳をフル活動させるのですね。初見にはそれなりのコツがあって、初歩の段階からそれを意識して練習することが大切なんです。
また、初見が上手い人は、あらゆる調のスケール(音階)練習をきちんとしています。調の持つ雰囲気や色彩感、手指のポジションなどを掴めているからです。
私は子供の頃、「初見演奏」としての特別な練習はしませんでしたが、レッスンの課題曲以外に、やさしい曲集などを買ってもらって(先生にはないしょで)適当に!?遊び弾きしていた記憶があります。楽譜を読むことは、それほど苦にはなっていませんでした。しかし後に、それだけではまだ不足、と感じ始めました。大人になってからも色々なタイプの曲を弾いてみたり、初見演奏の課題集など、システマティックに編集されている教材も使い、さらに練習しました。大人になってからの訓練でも、初見力はある程度伸びることを、自ら証明できました。それでも、難曲やスコアリーディング(オーケストラの楽譜をピアノに置き換えて弾く)などは、初見では難しい。やはり頭が柔らかいうちから、少しずつ練習することが必要だと思います。
最近の脳科学の研究によると、15才までの初見演奏の練習量が初見能力の優劣を決定するとも言われています。(参考文献:古屋晋一著「ピアニストの脳を科学する」)
たとえ専門家にならなくても、小学校高学年や中学生になって、部活や勉強が多忙になってもピアノを続けられる生徒さんの多くは、ある程度楽譜を読むのが速い子どもたちです。短時間で楽譜が読めることは、仕上げに向かっての練習を楽しいものにしてくれます。ですから小さい頃から、無理なく初見力をつけていくことが望ましいのです。
楽譜を読むことが本を読むのと同じように、ワクワクする、楽しいものになってほしいと思います。
ご父兄の方々には、ご家庭での初見練習のサポートをお願いしていますが、急には出来るようにはなりません。「焦らず少しずつ」です。やさしく見守ってあげてくださいね。
☟大人の方もあきらめないで!システマティックにトレーニング!!