風薫る五月、のはずが・・・今日は走り梅雨のようなお天気になりました。皆さまいかがお過ごしですか?
教室では、体験レッスンのお問合せが再び多くなる季節です。
体験レッスンでは、お子さんにピアノの楽しさを体感していただく他、レッスンを始める上で、ご家庭の環境整備などについてもお話させて頂いています。
ピアノは週1回のレッスンに通うだけでは、上達は望めません。ご家庭での毎日の練習が必要です。ですからご家庭にピアノが必要です。
体験レッスンの時に親御さんから多い質問は「生ピアノでないとダメですか?」ということ。
私がピアノを習い始めた頃は、ピアノといえば「グランドピアノ」か「アップライトピアノ」でした。ところが、今は「電子ピアノ」という悩ましい楽器があるんですよね。普通のピアノは「生ピアノ」「アコースティックピアノ」などと呼ぶようになりました。
生ピアノと電子ピアノの違いは何ですか?とのご質問も多いのですが、最近はグランドピアノに近いタッチのものも販売されているので、一概に違いを申し上げることはできませんが、タッチの違いもさることながら、特に重要なことは「倍音」が出ないことでしょう。専門的なことなのでここでは割愛しますが、電子ピアノでは「耳」が育ちにくいと言われています。
昨今の住宅事情や、ピアノを習う目的の多様化等により、数年前から私のピアノ教室でも電子ピアノで習う生徒さんを、条件付きでやむなく受け入れることにしました。
その条件ですが、
♪鍵盤の数が普通のピアノと同じ88鍵のもの。
♪椅子に座って演奏できる状態にし、椅子の高さが調節できること。
♪ヘッドホンでの練習は極力控えること。
♪生ピアノとの違いをお解り頂いた上でレッスンを受けること。
ここまで書いて今、ふと思った・・・これなら生ピアノ買う方がいいでしょ!?
しかし・・・
ピアノ購入をためらう理由は、
①置き場所がない。
②値段が高い。
③近隣環境により、大きな音が出せない。
④ピアニストを目指すわけでもなく、ちょっと弾けるようになればいいから。
⑤ピアノを買っても子供が続けるかどうか、わからない。
などです。
①ですが、他の物を片付けてでも無理でしょうか?最近の国産ピアノは重量も昔ほど重くありません。
②のお値段ですが、金銭感覚は人それぞれ。決して安いとは申しませんが、一つ言えることは電子ピアノは壊れたら直りません。「音が一か所出なくなった・・・」という話は時々耳にしますが、1か所でも出なくなったら使い物になりません。その時点で粗大ゴミと化すのです!その点、生ピアノは修理すれば半永久的に使えます。不要になったときには買い取りしてもらえます。皆さんはどちらが価値があると思われますか?また、中古の品物を展示販売したり、レンタル制を設けている楽器店もあります。実は、初心者には中古の方が良いとも言えるんです。
③は音の問題ですね。夜間は弱音器を付けたり、ヘッドホンを付けて消音出来るタイプもあります。
④と⑤あーー、、これね、一番やっかいな問題。そして、このことについて語れば、私は一晩中喋ってしまうかもしれない(笑)
一つ事例をお話しましょう。私の教室に通っている生徒さんで、年中さんの時から電子ピアノで練習していた生徒さんが、ブルクミュラーに入った頃(導入段階が終わった頃)私にこう言いました。「先生、うちのピアノね、先生が弾いたみたいに「うわーーーっ!」って音を大きくしていったり、小人みたいな小さな音とかー、ないしょのお話みたいな音とか、出ないの。。」
生徒さん、悲しかったと思います。
レッスンでは音楽的に高い要求は出来ないですし、表現できなくても諦めていました。もったいないなー、と思いました。指はよく動くし感性も豊かなのに・・・。
そして、それから数か月後、その生徒さんのピアノのタッチがすごく変わってきたんです。表現も生き生きとしてきました。もしや?と思って親御さんに尋ねたら、生ピアノを購入したというのです。
本当に、演奏にすべて出てしまうのですね。生徒さんは今高校3年生。勉強や部活の合間にピアノを弾くことがとても楽しいと言って、レッスンにも休まず通ってきています。
生ピアノは弾き手の繊細な心まで音として写し出します。そういったことを実現することで、情操教育の一端を担えるのです。
親御さんは、はじめから生ピアノを買えば良かった、と言っていました。
「本物」と出会い、「本物」を知ることで、ピアノの魅力・音楽のすばらしさを感じ、続けるようになるのですね。
一生のうちで子供時代は短く、二度と訪れない貴重な時代です。どのような教育を受けさせるか、親御さんにとっては日々選択を迫られることでしょう。ピアノを購入することは、大きな投資かもしれません。しかし、たとえ将来続かずに止めてしまったとしても、幼少期に「本物」と出会った子供は、必ず音楽に帰ってきます。弾かないとしても、音楽の良き理解者になり、良き聴衆となることでしょう。
環境整備はピアノレッスンを受けるにあたって、最も重要です。
それでも、どうしても電子ピアノでないと無理とお考えでしたら、やむを得ません。
※電子ピアノのすべてが悪いということではありません。多様な機能をうまく利用すれば、大変便利で面白く使えることも確かです。私も小型のキーボードを使って、生徒さんとアンサンブルの練習などに使っています。
※楽器を購入する時は是非、信頼できる楽器店かピアノの指導者に相談することをお奨めします。当教室も、いくつかの楽器店さんとお付き合いがありますので、声をかけてくださいね。
下記のPTNAホームページ記事もご参考に!