私が所属する全日本ピアノ指導者協会(PTNA)では、毎年ピアノコンペティションを開催しています。A2級の就学前幼児の部門から大人のためのグランミューズ部門まで、幅広い年代の参加者が奮闘します。今年もそのコンペシーズンが始まりました。
グランミューズ部門には、音大を卒業された方も参加されますが、私が特に注目したいのは、アマチュアのピアノ愛好家の方々です。中でも40歳以上の参加者によるカテゴリーでは、人生の様々な経験を積まれた方が舞台に立ちます。先日6月14日に京都で行われた予選でも、そのような方々が熱演を繰り広げました。頭が下がる思いです。
私の教室には、今年80歳を迎えたご婦人が通ってこられています。ピアノを始めたのは定年退職後しばらくして、67歳の時。子供の頃、同級生がピアノを習っていたけれど、自分は習わせてもらえなかった・・・(ごく一部の裕福な家庭の人しか習えない時代だった)ピアノへの憧れがずーっと続いていたのだといいます。
その方との出会いは、私が玄関先で花に水やりをしている時でした。
「ピアノがお弾きになれるっていいですね。私、ピアノの音、大好きなの。」と声をかけられたのです。コンサートにもよく出掛けるという。好きな曲はドボルザークの「新世界」だとか。
私は、その方がご近所の方だと分かったので、「よかったら一度弾いてみませか?」と言いました。
その時は、「まあ、ありがとう。機会があればまたお願いするわね。」と言って、立ち去りました。
その後、習いたいと言ってこられたのは、半年以上経った頃でしょうか。本当に好きなんだ!と思いました。そして、とても嬉しかった。
練習するのは学校で習った唱歌、日本の童謡や民謡、クラシックの名曲をやさしくアレンジしたものなど。
本当に真面目にレッスンを受けられる姿に、こちらが教えられることも多いんです。休まず熱心に通われ、コンペにこそ出演されませんが、ピアノステップ(PTNAの演奏行事)に出演、5回継続表彰も受けられました。
舞台で演奏するって本当に大変なことなのに、その勇気には敬服いたします。
その方の演奏を聴いていると、目がうるうるしてきます。人生の厚みとでもいうのでしょうか?伝わってくるものがあります。本当に、素敵な演奏をなさるのです。
演奏というものは、上手いとか下手とかではなく、「自分らしさを語る」ものなんだな。ということを、私はその方から教えられた気がしています。
今は、ご家庭の事情で、不定期でレッスンを受けに来てくださっていますが、いつかまた舞台に立って、私たちに何か大切なことをピアノで語って頂きたい、と思っています。
何歳になってもピアノレッスン!
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