5月29日(木)、降り立った東京はこの季節とは思えない暑さ。
この日、東京オペラシティコンサートホールで開催された「ミハイルプレトニョフ・ピアノリサイタル」を聴きました。
氏の演奏を初めて聴いたのは1997年のこと。あれから17年、ずっと心の奥に響いていたピアノの音。その音との再会を果たしたのです。
ミハイルプレトニョフ氏は現在、自身が設立したロシア・ナショナル管弦楽団の芸術監督・主席指揮者を務めていますが、ピアノ演奏活動は2007年より休止していました。
2013年、演奏活動再開のきっかけになったのは、あるピアノとの出会いだったとのこと。そのピアノは「Shigeru Kawai」。東京青山のカワイミュージックショップにあった2台のうちの一台だそうです。
ピアノストは通常、演奏会で弾くピアノは持ち込みません。ホールに設置されている何台かのピアノから選ぶのです。もちろん(莫大なお金をかけて?)お気に入りのピアノをホールまで運ぶ演奏家もいないわけではありません。氏もその一人なんです。
そのくらい、自分の出したい音にこだわっているんですね。
☝東京オペラシティ コンサートホール エントランス
その日の演奏の印象ですが、やはり音が美しい。特にピアニッシモの音は究極と言えます。そしてピアノという楽器をオーケストラとして扱っているのです。実に多彩な音色を紡ぎ出します。シューベルトのイ短調のピアノソナタに登場するスタッカートはバイオリンなど弦楽器のピッチカートのように聴こえ、またあるときはチェロのように、左手が朗々と歌う。
同じくシューベルトのイ長調のピアノソナタの緩徐楽章では、あまりの美しさに涙があふれてきてしまいました。(うーーっ、ハンカチ、ハンカチ!!)
バッハのイギリス組曲やスクリャービンの24の前奏曲ではそれぞれの曲の特徴を捕まえ、一呼吸で音色を変えていました。
氏はピアノを弾く時も指揮者なのです。
17年前に聴いた時も驚愕したのですが、今回はさらに円熟味を増し、深みのある素晴らしい音楽世界を創り上げていました。
終演後、鳴りやまない拍手喝采。アンコールはスクリャービンの「エチュードOp.2-1」。ずっと聴いていたかった。。
放心状態!再び惚れてしまいました。氏の演奏は本当に普通ではありません。
その日はホテルに戻り、興奮冷めやらぬまま、いつの間にか心地良い眠りにつきました。
本物に出会うことは大切なことです。刺激を受けます。そして、ただただ感動するのではなく、少しでも自分の演奏や指導にプラスになれば、と思います。レベル、違いすぎますが(笑)